今は、その姿を消しつつあるようだ。
薪(まき)を背負い、熱心に読書しながら歩いている姿は勤勉の模範とされる。
明治14年に出版された二宮金次郎の伝記的な書『報徳記』に
「『大学』の書を懐にして、途中歩みなから是を誦し、少も怠らず」
と出てくる。このように書かれているが、どうも時代背景から言って、
読みながら歩くことはしていなかっただろうと言われる。
二宮金次郎は、当時人気の人物だったのだろう。
明治24年の幸田露伴の著書『二宮尊徳翁』の挿絵に、
狩野派の小林永興が、やはり薪を背負った尊徳像を入れた。
これでイメージが定着したようだ。
その構図のヒントになったのは中国の故事にならった「朱買臣図(しゅばいしんず)」。
薪を肩に担ぎ、歩きながら本を読んでいるのは、やはり似ている。
また、幸田露伴がヒントにしたのではないかと言われているのは、
イギリスのジョン・バンヤンが著した『天路歴程』の挿絵。
旅の巡礼らしい人物が重いものを背負い、
聖書を読みながら歩を進めているというもの。
これも似ている。
二宮金次郎が読んでいる本は、
上記にある通り「四書五経」の『大学』らしい。
『大学』は、「正心、修身、斉家、治国」を説くもの。
尊徳が、小田原藩の分家領地の農村改革は、それらの思想で成されたと言われている。
まさに彼の思想に近い。
以前、二宮金次郎の姿は、勤勉の象徴だったが、今は、ちょっと違う。
この姿に重なるのは、
歩きスマホは、やめましょう?